-双胎間輸血症候群のレーザー治療(胎児治療)-


双胎間輸血症候群のレーザー治療(胎児治療)

双胎間輸血症候群

胎児を立体的に見ることができる3次元超音波装置やMRI(磁気共鳴画像)装置など出生前診断技術の進歩で、生まれる前の赤ちゃんに病気が見つかるようになりました。そこで、死産などを防ぐため、妊娠中に治療する「胎児治療」が広がっています。

双胎間輸血症候群も、治療の対象になる疾患の一つです。双子の胎児に栄養を送る血管が胎盤でつながっており、血液が過剰に流れ込む胎児は尿量が増え、尿が主成分である羊水もあふれます。圧力がかかり、胎児の体がむくんだり、心不全を起こしたりします。一方、血流が過少な胎児は貧血や腎不全などに陥ります。双胎間輸血症候群は、出産2000~4000件に1回の割合で起こります。

針を刺して過剰な羊水を抜く対症療法により、2児とも亡くなる確率は5割に低下しますが、生後も10~15%に脳障害が残るとされています。


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レーザー治療

根本的治療法が「レーザー治療」です。子宮内を見る内視鏡とレーザー装置が一体化した、直径3ミリの器具を腹部から子宮に入れます。体外からも超音波装置で見ながら、胎盤上でつながった数本の血管にレーザーを照射、血管を固まらせて血流を断ちます。治療は1時間ほどで済みます。

国立成育医療センターでは、特殊診療部長の千葉敏雄さん、周産期診療部長の北川道弘さんらの専門チームが治療にあたります。2003年春から、この疾患に同様の治療を21件行い、2児生存が10件、1児のみ生存が9件。2児とも亡くなったのは2件で、全体の1割以下でした。

このほか、胸に大きな腫瘍(しゅよう)ができた胎児に対し、子宮を切開して胎児を取り出したうえ、腫瘍を摘出する手術を行い、再び子宮に戻す手術なども実施しています。

ただし、健康な母親を介した胎児治療は、母体に大量出血などの可能性もあるだけに慎重論もあります。保険はききません。

千葉さんは「内視鏡などの進歩で、さらに母子の身体に負担が少ない胎児治療が今後、普及していくだろう」と予測しています。

胎児治療の歴史

1960年代、欧米で胎児に輸血したのが最初とされています。日本でも胎児輸血のほかに、母親に薬を投与して胎児の不整脈を治す治療などが試みられています。

尿管や尿道がふさがっているため排尿ができず、腎臓機能障害を起こす「閉そく性尿路疾患」に対して、胎児の膀胱(ぼうこう)と羊水を結ぶ管を入れて排尿させる治療法が2004年12月、高度先進医療として初めて、国立循環器病センター(大阪府吹田市)で認められました。

日本産科婦人科学会の周産期委員会によりますと、胎児治療は1996年から4年間に、86施設で584例が行われました。現在は、もっと多くの件数が行われていると見られています。2004年11月には、日本胎児治療学会が発足しました。


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関係医療機関

国立成育医療センター

国立循環器病センター(大阪府吹田市)

日本胎児治療学会

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